SSAI（サーバーサイド広告挿入）とは？2025年に進化する動画配信・OTT広告の最前線

08/10/2025

Table of Contents

世界のOTT市場は、動画配信サービスの拡大とともに急成長を続けています。調査会社 Grand View Research のデータによると、市場規模は2023年の2,357億米ドルから、2030年には1兆791億米ドルに達し、年平均成長率（CAGR）は24.3%と予測されています。
この驚異的な数字は、消費者がデジタルコンテンツへアクセスする方法が大きく変化していることを示しており、OTT広告はメディア企業にとってターゲット視聴者とより正確かつ効果的につながる大きなビジネスチャンスとなっています。

こうした流れの中で注目されているのがSSAI（サーバーサイド広告挿入）です。SSAIは動画コンテンツに広告をシームレスに統合し、読み込み遅延を抑え、ユーザー体験を損なわずに広告を配信できる革新的な技術です。

本記事では、「SSAIとは何か」「どのように機能するのか」「メリットと課題」「今後のOTT広告の展望」を、OTTcloudsの視点からわかりやすく解説します。

SSAI（サーバーサイド広告挿入）とは？

SSAI（Server-Side Ad Insertion）は、動画コンテンツのサーバー側で広告を直接埋め込み、ユーザーのデバイスに届く前に一本化された映像ストリームを生成する技術です。

従来のCSAI（クライアントサイド広告挿入）では、ユーザー端末のプレイヤーが広告を読み込み、動画と差し込む仕組みでした。一方、SSAIは配信サーバー上で広告を挿入するため、ユーザーが視聴する際にはすでに「広告とコンテンツが一体化」した状態で届けられます。

広告そのものを制作するのではなく、SSAIは Google Ad Manager や FreeWheel などの広告配信プラットフォームと連携し、視聴者データやターゲティング条件に基づいて最適な広告をサーバー側で差し込みます。結果として、同じ番組を同じ時間に見ていても、ユーザーによって異なる広告が表示されることが可能になります。

この仕組みにより、広告とコンテンツの切り替えがスムーズになり、視聴体験の中断や遅延を最小限に抑えることができます。さらに、広告がサーバー側で統合されているため、ブラウザのアドブロッカーによる遮断も回避しやすく、広告主・配信事業者双方にとってメリットが大きい点も特徴です。

SSAIの仕組み

サーバーサイド広告挿入（SSAI）は、動画コンテンツと広告をユーザー端末に届ける前にサーバー上で統合する技術です。ここではその基本的な流れを分かりやすく解説します。

1. コンテンツの受け取り

SSAIサーバーはまず、以下の2種類のストリームを受け取ります。

メインコンテンツ：スポーツ中継、映画、ドラマ、オンデマンド配信などの映像本編。
広告コンテンツ：Google Ad ManagerやFreeWheelなど、広告サーバー／広告管理プラットフォームから供給される広告素材。

2. コンテンツのステッチング（統合）

サーバー上で、あらかじめ設定されたタイミングや番組の自然な区切りに合わせて広告を挿入します。
ここでは視聴者の地域、属性、視聴履歴などのデータをもとにパーソナライズされた広告が選ばれるため、同じ動画を見てもユーザーごとに異なる広告が再生されます。

3. エンコードとトランスコード

広告とコンテンツを統合した後、サーバーはそれを1つの最適化された動画ストリームにエンコード／トランスコードします。
この過程でユーザーの端末環境（スマホ／PC／テレビ）やネットワーク状況に合わせて映像品質が自動調整されます。ライブ配信ではほぼリアルタイムで処理され、VODの場合は再生前やオンデマンドで処理が行われます。

4. 動画配信

広告が統合された統一ストリームはユーザーのデバイスに届けられます。
この仕組みにより、広告とコンテンツの切り替え時にも追加の読み込みや遅延が発生せず、シームレスな視聴体験が実現します。

SSAI と CSAI 広告の違いとは？日本の動画配信業界向け解説

HLSストリーミングとは？仕組み・メリット・導入手順まで徹底ガイド（2025年版）

SSAIの実際の活用例

イメージしやすい例として、サッカーのライブ配信を考えてみましょう。

ある配信プラットフォームがSSAIを利用して試合を生中継しているとします。
サーバーは試合映像と複数の広告素材を同時に受け取ります。

ハーフタイムなどの休憩時間になると、サーバーは自動的に広告を映像ストリームへ挿入します。

ニューヨークの視聴者には地元の自動車ディーラーの広告
ロサンゼルスの視聴者には地域のレストランチェーンの広告

といったように、地域やユーザー属性に応じた広告が配信されます。

これらの広告は映像にシームレスに統合されるため、視聴者は追加の読み込みや画面切り替えを感じることなく、スムーズにコンテンツを楽しむことができます。

結果として、

配信事業者にとっては広告収益の最大化
視聴者にとっては関連性が高く快適な広告体験

が実現します。

ライブ配信とVODにおけるSSAIの活用

サーバーサイド広告挿入（SSAI）は、ライブ配信とVOD（ビデオ・オン・デマンド）の両方で利用でき、放送局やコンテンツ事業者に多様な収益化の機会をもたらします。

ライブ配信での活用

スポーツ中継、ニュース番組、コンサート、eスポーツ配信など、多くの視聴者が同時に集まるライブ配信では、SSAIが大きな効果を発揮します。
広告はリアルタイムで映像に統合されるため、視聴体験を途切れさせることなく広告を届けることが可能です。
これにより、広告主は大規模で熱量の高い視聴者層にリーチでき、配信事業者は広告収益を最適化できます。

VOD（オンデマンド配信）での活用

映画やドラマ、アーカイブ映像といったオンデマンド配信においても、SSAIは強力な武器となります。
視聴者の属性や興味・行動データに基づき、パーソナライズされた広告を動的に挿入できるため、広告効果の最大化が可能です。
サーバー側で広告を統合する仕組みにより、広告完了率が向上し、VODプラットフォームの収益機会も拡大します。

トータルソリューションとしてのSSAI

ライブ配信でもオンデマンド配信でも、SSAIは一元的な広告配信ソリューションを提供します。

広告収益の最大化
広告ターゲティングの高度化
視聴体験の向上

これらを同時に実現することで、広告主・配信事業者・視聴者の三者にメリットをもたらします。

SSAIのメリットと利点

1. シームレスな視聴体験と高い広告完了率

広告を動画ストリームに直接統合することで、コンテンツと広告の切り替えがスムーズになります。これにより、広告完了率は非常に高く、特にライブ配信イベントでは最大98%の完了率を達成するケースもあります。結果として、広告キャンペーン全体の効果も向上します。

2. 確実な広告収益

広告がサーバー側で映像に埋め込まれるため、アドブロッカーによる広告遮断の影響を受けにくいという利点があります。これにより、配信事業者は安定した広告収益を確保できます。

3. ダイナミック広告挿入（柔軟な広告更新）

SSAIはリアルタイムで広告を差し替えられるため、最新の視聴者データに基づいて即時に最適化された広告配信が可能です。これにより、広告主はよりパーソナライズされた広告体験を提供できます。

4. デバイス負荷の軽減とスケーラビリティ

広告統合やトランスコード処理はすべてサーバー側で行われるため、ユーザーの端末にかかる負荷を大幅に軽減できます。性能の低いデバイスでも快適に視聴でき、さらに同時視聴者数の増加にも柔軟に対応できる拡張性を備えています。

5. 集中的な広告管理

広告の処理・挿入・管理がサーバーで一元化されているため、配信事業者は広告キャンペーンの更新・監視・調整を効率的に実施できます。複数プラットフォームに配信する場合でも、運用負荷を最小限に抑えることが可能です。

SSAIの課題

1. リアルタイムなパーソナライズの制限

SSAIでは広告がサーバー側で動画に統合されるため、クライアントサイドのように瞬時に広告内容を差し替える柔軟性は限定的です。そのため、細かいレベルでのパーソナライズやインタラクティブ要素を加えるのは難しい場合があります。

2. 高度なインフラとコスト負担

大規模な動画配信と広告統合を行うには、強力なサーバー環境やCDN（コンテンツ配信ネットワーク）、エンコード／トランスコード技術が必要となります。これらのシステム構築や運用には相応の投資が求められ、特に中小規模の事業者にとっては大きな負担となる可能性があります。

3. 遅延やインタラクティブ性の制約

SSAIは基本的にスムーズな視聴体験を実現しますが、エンコードやトランスコードの処理によってわずかな遅延が生じることがあります。ライブ配信では、この遅延がユーザー体験に影響を与える場合もあります。また、広告が映像ストリームに統合されるため、クリック可能なバナーや双方向広告のようなインタラクティブ機能を付加するのが難しいという課題もあります。

4. データ分析・効果測定の難しさ

SSAIでは広告とコンテンツが一体化して配信されるため、広告単体の視聴データを分離して取得するのが難しいという問題があります。その結果、広告主にとってはキャンペーン効果の正確な測定や、データに基づいた戦略の最適化が難しくなる可能性があります。

OTTcloudsによるSSAIソリューション：FASTチャンネルとVOD対応

OTTcloudsでは、FASTチャンネルと VOD（ビデオ・オン・デマンド）双方に対応した統合型のSSAIソリューションを提供しています。これにより、事業者は広告収益を最大化しながら、視聴者にとって快適な体験を実現できます。

FASTチャンネル向け

FAST（Free Ad-Supported Streaming TV）チャンネルは、インターネット上で無料配信されるデジタルテレビの形態で、近年日本国内でも注目を集めています。
OTTcloudsのSSAIを導入することで、広告はライブストリームにシームレスに統合され、高い広告完了率を維持しながら放送のような安定した配信を可能にします。

VOD向け

オンデマンド型の動画配信でも、OTTcloudsのSSAIは強力な効果を発揮します。

管理しやすい動画ライブラリ
サーバー側での広告統合
ユーザーデータに基づいたパーソナライズ広告

これらを組み合わせることで、視聴者一人ひとりに適した広告体験を提供します。また、バッファリングを最小化し、あらゆるデバイスで滑らかな再生品質を保証します。

コンサルティングと導入サポート

OTTcloudsでは、FASTチャンネル開発やVOD配信におけるSSAI統合についてのコンサルティングや料金プランのご相談も承っています。各事業者のビジネスモデルや配信環境に合わせた最適な導入をサポートします。お気軽にご相談ください！

まとめ

本記事では、サーバーサイド広告挿入（SSAI）について、その仕組み、メリット、課題、そして活用の可能性を解説しました。

SSAIは、広告を映像ストリームに直接統合することで、視聴者にシームレスな体験を提供しつつ、広告主・配信事業者双方に大きな価値をもたらす技術です。特に、ライブ配信とオンデマンド配信の両方に対応可能であることから、今後のOTT広告戦略において中心的な役割を果たすと考えられます。

もちろん、インフラコストやデータ計測の難しさといった課題は存在しますが、OTTcloudsが提供するソリューションを活用することで、これらのハードルを乗り越え、広告収益の最大化と視聴者体験の向上を同時に実現することが可能です。

デジタル時代において、動画配信ビジネスはますます競争が激化しています。SSAIはその中で、持続的な成長と新たなマネタイズの可能性を切り拓く鍵となるでしょう。